設立趣旨

健康志向社会においてライフスタイルは多様化の一途を辿っており、特に食事スタイルは核家族化、共稼ぎ世帯の増加などにより中食への利用度が上昇し、内食、外食を凌ぐ勢いである。

当然ながら消費者は食品の表示を確認し、品質を判断し購入する訳であるが、栄養表示は難しい問題を抱えている。

また、異なる地域や季節、出回り期、育成方法の工夫などによって生じる、栄養成分の理論値と実測値の相違を知ることは容易ではない。

さらに、「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書によると、エネルギー摂取量を正確に測定することは、過小申告と日間変動という二つの問題の存在のために極めて困難であることが指摘されている。

すなわち、過小申告は系統誤差の一種であり、集団平均値など集団代表値を得たい場合に特に大きな問題となる。

また、二重標識水法による総エネルギー消費量の測定と同時期に食事アセスメントを行った研究では、第三者が摂取量を観察した場合を除き、通常のエネルギー摂取量を反映する総エネルギー消費量に対して、食事アセスメントによって得られたエネルギー摂取量は総じて小さく、また、BMIが大きくなるにつれて過小評価の程度は甚だしくなることが指摘されている。

このように、これまでのエネルギー摂取量や各栄養素摂取量の測定に関しては多くの問題が指摘されている。これらの問題を解決するためには、より科学的に正確・簡易に測定可能な方法を開発することが求められている。

幸い、その解決の門戸を開くきっかけとして、近赤外線を食品に照射し、糖・脂肪・たんぱく質に吸収された光と反射された光をコンピューターで測定し、カロリーに演算処理するというしくみが開発された。この開発はこれからの栄養科学だけでなく調理科学など様々な分野にとって非常に期待されるものと思われる。

しかしながら、実際に使用すると近赤外線分光測定装置には多くの問題点を抱えていることがわかる。そこで多くの研究者と実際お使いの方々と共に意見を交わし、近赤外線分光測定装置による分析評価に関わる、装置の開発や分析技術等について改善を求め、栄養・調理科学の発展に寄与するため、「近赤外線栄養成分測定研究会」を発足することとしました。